動物虐待の刑事告発:告発状作成のポイントと具体例
以前のコラムでは、刑事告訴における告訴状の記載要領について掘り下げました。刑事告発における告発状も記載要領は基本的に同じです。
刑事告訴と刑事告発の大きな違いは、その主体にあります。刑事告訴は、犯罪の被害者やその法定代理人などのみが行える手続です(刑事訴訟法230条など)。一方で、刑事告発は、誰でもすることができます(刑事訴訟法239条)。
今回は、動物愛護管理法が規定する3つの罪について、刑事告発する際に、どのように記載すればよいのか、例文を交えながら解説したいと思います。

動物愛護管理法上、動物虐待には主に2つの事案が考えられます。
1 動物愛護管理法が規定する3つの罪に該当する可能性が高い又は緊急性が高い事案
2 今後将来的に虐待を受けるおそれがある事案
いずれの事案も明確な線引きはありません。虐待等が発生した又は発生しそうな場合は、まずは警察又は行政(自治体)に通報することを覚えておけば問題ありません。
動物愛護管理法第44条は、愛護動物を殺傷(1項)、虐待(2項)、遺棄(3項)した者に対し、それぞれ刑事罰を規定しています。なお、愛護動物とは、牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひるその他人が占有している動物でほ乳類、鳥類又は爬虫類に属するものとされています(法44条4項)。
動物愛護管理法第44条
1 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金に処する。
2 愛護動物に対し、みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、又は飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であって疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であって自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行った者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する。
3 愛護動物を遺棄した者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する。
殺傷、虐待、遺棄のうち、虐待と遺棄については環境省が考え方を示しています。
虐待に関しては、一般家庭における、虐待に該当する可能性又は放置すれば虐待に該当する可能性がある考えられる例が挙げられています。
例えば、
・しつけや訓練と称して、殴る蹴るの暴力を加えたりするなどして愛護動物に怪我を負わせる。
・栄養不良で骨が浮き上がっているほど痩せている(病気や獣医師による治療を受けている場合は除く)。
・病気や怪我をしているにもかかわらず獣医師による診察を受けていない。
遺棄に関しては、愛護動物を移転又は置き去りにして場所的に離隔することにより、当該愛護動物の生命・身体を危険にさらす行為としています。ただ、実際に遺棄に該当するかの判断は、離隔された場所の状況、動物の状態、離隔した目的などを総合的に考慮してなされます。
これらの愛護動物殺傷罪(1項)、虐待罪(2項)、遺棄罪(3項)に該当するような場面を目撃した人は誰でも、捜査機関に刑事告発をすることができます。
もちろん捜査機関に刑事告発する前に、必要に応じて、各自治体の窓口で相談してもよいと思います。
告発状の中でも一番重要なのが、告発の趣旨と告発事実です。
①「被告発人の下記所為は、動物愛護管理法第44条●項(愛護動物●罪)に該当するものであるので、被告訴人に対する厳重な処罰をされたく告発する。」
②「被告発人は、●頃、●において、みだりに、自己の飼育する犬に給餌や排せつ物の処理等をせず、同犬を衰弱させ、もって愛護動物を虐待したものである。」
告発の事実に関しては、愛護動物虐待罪に該当すると思われる被告訴人の行為を時系列に記載していきます。加えて、告発人において、虐待事案を認識した経緯やきっかけ、虐待等をしていることを確認した状況と方法なども記載します。感情的な表現は避け、事実のみを記載するように心掛けてください。
記載が難しい、わからないようでしたら、当事務所にご相談ください。事実経過をヒアリングして、受理される告発状の作成をサポートいたします(受理を保証するものではありません。)。
動物虐待に対する刑事告発に関して、動物愛護管理法が規定する3つの罪と、告発状の記載例を中心にご紹介しました。動物愛護管理法が規定する3つの罪に該当する可能性が高い又は緊急性が高い事案と、今後将来的に虐待を受けるおそれがある事案を発見した場合は、まずは警察か自治体に相談してみてください。あなたのその一歩が命を救うきっかけとなることもあります。