ペットトラブル、どう解決する? 内容証明郵便でできること
ペットとの暮らしは、私たちにかけがえのないものを与えてくれます。しかし、時には予期せぬトラブルに発展することもあります。例えば、他人の犬に噛まれた、ペットショップで購入した犬に病気があった、トリミング中に犬が怪我をした、あるいは近隣の犬の鳴き声に悩まされているなど、その内容は多岐にわたります。
こうしたトラブルを当事者間で解決しようとすると、感情的な対立が生じやすく、問題がこじれてしまうケースも少なくありません。弁護士への相談・依頼も一つの手段ですが、紛争が本格化する前段階であれば、内容証明郵便の作成を行政書士に依頼することで、状況を打開できる可能性があります。

内容証明郵便は、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったのか」を郵便局が証明する制度です。この証明によって、以下の効力が生まれます。
相手に何をしてもらいたいのか、曖昧ではなく、法的に有効な形で具体的に伝えることができます。例えば、犬に噛まれてケガをしたケースであれば、「治療費と慰謝料を請求してください。」と明確に意思を伝えることができます。
また相手が「そのような書面は受け取っていない。」と主張しても、郵便局が受取日を証明しくれるので言い逃れは通用しません。さらに、後に裁判になったとしても、これらは証拠として用いることができますので、トラブル解決において有利に働くでしょう。
例えば、犬に噛まれてケガをしたケースの場合、内容証明郵便にはこのような内容を記載します。
「通知人(あなた)は、令和●年●月●日午前●時頃、●先の路上を歩行していたところ、貴殿(相手方)が連れた犬が通知人の右ふくらはぎに噛み付いたことで、通知人は全治10日間の傷害を負いました。貴殿には、民法上、当該犬の種類及び性質に従い、通常払うべき程度の注意義務を負うところ、これを怠ったことにより通知人に上記傷害を負わせました。従いまして、通知人は貴殿に対し、精神的苦痛とする慰謝料金●万円、及び治療費として金●万円の合計金●万円を請求致します。本書到達後、10日以内に下記金融機関までお振込みくださいますようお願い致します。(以下略)」という感じになるでしょう。
内容証明郵便は、意思表示の手段として有効ですが、いくつか理解しておくべき注意点があります。
まず、内容が法的に正しいとされるわけではありません。先ほどの噛みつき(咬傷被害)のケースでは、実際に訴訟になれば、噛みついた犬の飼い主に注意義務違反があったか、慰謝料金額は妥当か、などはケースバイケースで判断されます。内容証明郵便はあくまで「意思表示の手段」であることを理解しておくことが重要です。
次に、強制力や執行力はありません。そのため、内容証明郵便を受け取った相手が、これを無視することは自由ですし、無視したからといって直ちにあなたが強制執行できるわけでもありません。仮に、「連絡ない場合は法的措置をとります。」と記載しても、実際に相手から連絡が来なかったとしても、郵便局が代わりに法的措置をとってくれるわけではありません。実際に法的措置の手続をとる場合には、弁護士への相談が必要です。
また書き方には細心の注意が必要です。穏便な解決を望むのか、毅然とした態度を示すのか、内容証明郵便の書き方にはさまざまなアプローチがあります。表現の仕方によってはかえって相手を刺激し、トラブルを深刻化させてしまうリスクもあります。
多岐にわたるペットトラブルにおいて、どのような内容を記載すれば効果的な内容証明郵便になるのでしょうか。大切なのは、以下の点を明確にすることです。
いつ
誰が
どういう具体的事実に関して(どのようなトラブルがどのように起こったのか)
どういう状態にあり(怪我やペットの状況など)
どういう理由で(なぜ相手に責任があると考えているのか、その法的根拠)
誰に
何をしてほしいのか(損害賠償請求、再発防止策など)
これらの要素を、冗長にならず、かつ抽象的にならないように整理して記載することが重要です。ペットトラブルは、法的要素が多く含まれる分野なので、法的に整理された内容証明を作成することをお勧めします。
内容証明郵便は、ペットトラブルにおいて非常に有効な意思表示の手段です。ペットは大切な家族でありパートナーでもありますが、飼い主にはペットに対する法的責任も伴います。「どうしたらいいかわからない」、「まずは話を聞いてほしい」といったお気持ちでも構いません。訴訟を回避し、早期解決のために何ができるのか、一人で抱え込まずに、お気軽に当事務所にご相談ください。状況に応じた適切なアドバイスと内容証明郵便の作成を通じて、問題解決への確かな一歩をサポート致します。